(C) Spyglass Media Group LLC.,The Kennedy/Marshall Company,Hollywood Pictures
簡単なあらすじ(ネタバレなし)
優秀な小児精神科医であるマルコムは、かつての患者であった青年から突然発砲される。
原因は、過去に青年の抱える問題を解消できなかったこと…。
事件から一年後、妻との関係悪化に頭を悩ませていたマルコムは、青年とよく似た特徴を持つ少年コールと出会う。
青年を救うことができなかった後悔を抱えていたマルコムは、コールを救うことを決心。
しかし、コールには、ある特殊な能力があり…
詳しいあらすじ(ネタバレあり)
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優秀な小児精神科医であるマルコムは、功績が認められて、市民栄誉賞を授与する。
妻のアンナとは仲睦まじく、多忙ながらも平穏な生活を送っていた。
しかし、マルコムとアンナが自宅で夫婦の時間を楽しんでいたとき、突然バスルームに下着姿で錯乱状態の青年が現れる。
彼は自身がマルコムの過去の患者であったことを明かし、マルコムはその少年「ヴィンセント」のことを思い出す。
ヴィンセントはマルコムを信じていたが、結局治ることはなく、そのことをマルコムに責め立てる。
マルコムは謝罪をするが、ヴィンセントはついにけん銃を取り出し、マルコムの腹部を撃ち抜いた。
そして、それと同時に、ヴィンセントも自身の頭に銃弾を撃ち込んで自死する。
事件から一年後、マルコムは自身が救うことのできなかったヴィンセントのことを後悔していた。
そんなとき、心に闇を抱える少年コールのことを知る。
マルコムはコールに声をかけるが、彼は怪しむような態度で、心を開こうとはしなかった。
帰宅したマルコムだが、妻であるアンナは彼の方を向こうとはしない。
マルコムとアンナの関係はすっかり冷え切ってしまっていた。
コールは母親リンと二人で暮らしているが、コールの周囲では度々不可解なことが起き、リンはそのことを気に病んでいた。
学校でも馴染むことができず、浮いた存在としてコールは周囲から避けられている。
ある日、コールが帰宅すると、リンとマルコムが二人で帰りを待っていた。
リンはコールのことを気に病みながらも、精一杯コミュニケーションを図ろうと試みる。
マルコムもコールと話をするが、コールはやはり心を開こうとはしない。
その後、マルコムは遅れて結婚記念日の祝いのためにレストランに向かう。
先に席についていたアンナの向かいに腰を下ろし、「コールがヴィンセントとよく似ていること」など、今日のできごとを話すが、アンナは黙ったまま。
コールは仕事にばかり時間を取られ、夫婦の時間を作れずにいることを謝るが、アンナはついにマルコムを残して帰ってしまった。
その後も、マルコムは何とかコールの心を開かせようと、根気よく接触を試みる。
そんな折に、マルコムはアンナが他の男性と何やら親密にしている様子を目撃する。
学校の授業で、先生が「学校は以前何に使われていた場所だったか」と質問をすると、コールはそれに対して「絞首刑をやった所」と答える。
先生は慌てて否定するが、コールはそれを認めずに、喚き始める。
コールは先生や周囲の生徒からも、ますます浮いた存在として扱われる。
それから、学校の同級生のパーティーに参加をしたコールは、家の上階の物置で誰かが言い合いをしているのを耳にする。
声の元を辿るようにひとりで上階に上るコールを見た同級生は、コールをその物置に閉じ込めてしまう。
悲鳴を聞いたリンが駆けつけると、コールは気絶していた。
その後、すぐに病院にコールを連れたリン。
コールは無事だったが、その身体にはあざがあり、リンは虐待の疑いをかけられ、激高。
そして、病室で寝ていたコールの元へ、マルコムは駆けつけて話をする。
コールが、「なぜ先生は悲しいの?」と質問をすると、マルコムは「過去に患者の少年を救えなかったことを後悔していること」、「それ以降、妻との関係が良くないこと」、「救えなかった少年によく似たコールを救うと決意していること」を素直に話す。
それを聞いたコールは、「死んだ人が見える」という秘密を打ち明ける。
死者は至る所にいて、自分が見たいものだけが見え、自分が死んだとは思っていないのだという。
コールの不可解な態度や周囲で起きていた不思議な出来事は、すべてこの能力が元となっていた。
コールはこれまで一人でこのことを抱え込んでいたが、マルコムに告白し、二人だけの秘密にすることを約束する。
しかし、マルコムはこれを「幻覚症状や妄想」と考え、精神病だと判断した。
病院での治療が必要であるため、自分の手には負えないと考える。
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数日後、マルコムとコールが話をしながら学校の廊下を歩いているとき、コールが突然立ち止まる。
コールには部屋の中で首を吊った死者が見えていたが、マルコムには見えない。
死者がいる場所では寒気がすると一心に語るコールだが、マルコムはやはり信じ切ることができない。
ある日、リンはコールの机の中に失くなったペンダントが入っていたことを問い詰めるが、コールは覚えがないと言い放つ。
リンはコールを信用することはできず、普段の出来事から、身体的にも精神的にも憔悴しきっていた。
一方で、マルコムの妻であるアンナは別の男性と親密にしていた。
そのとき、突然窓ガラスが割れる。
マルコムがその光景を目撃しており、妨害をするために窓ガラスを割ったのだ。
マルコムはすぐにその場を立ち去る。
アンナとの関係で思い詰めていたマルコムは、「君のケアはできない」とコールに言い放つ。
マルコムだけに秘密を話していたコールは、「先生しか僕を治せない」と涙を浮かべる。
帰宅後、マルコムはヴィンセントを治療していたときの録音テープを確認する。
部屋に誰もいない間に録音されていた何かの物音に気付いたマルコムは、音量を最大に上げる。
再生すると、「ヨ・ノ・キエロ・モリル(スペイン語で「死にたくない」)」と録音されていた。
このことで、「ヴィンセントもマルコムも本当に死者が見えていた」ということを確信した。
協会でコールと落ち合うマルコム。
マルコムはテープに録音された死人の声から、「死人は助けを求めている」とコールに伝え、「話を聞いてあげればいい」というアドバイスを残す。
その日の深夜、コールが家のテントにいるときに死人の少女が現れる。
慌てて逃げ出すコールだが、マルコムのアドバイスを思い出し話を聞くことにする。
翌日、コールはマルコムと一緒に、その少女の葬儀が行われている自宅を訪れる。
少女は二年間の病の末に亡くなっており、さらに下の妹も同様に病にうなされていた。
コールが生前の少女の部屋に入ると、ベッドの下には少女がおり、何かの箱をコールに手渡した。
コールは受け取った箱を、少女の父親に手渡す。
父親が箱を開けると、中には一本のビデオテープ。
テープを再生すると、そこには母親が少女の食事に床洗剤を混入している場面が記録されていた。
母親は少女のことを手にかけ、さらには妹にも同じ仕打ちをしていたのだ。
少女はこれらのことを伝えるために、死者が見えるコールの元を訪れていた。
少女の父親は、このテープによって真相を突き止めることができ、母親を問い詰める。
少女の一件がきっかけで、コールの心境に変化が訪れる。
死人に向き合うことが大切だとわかったコールは、徐々に明るさを取り戻した。
同級生とも良好な関係を築くことができるようになり、マルコムはそんなコールを見て安心する。
自分を救ってくれたマルコムに対して、コールは「奥さんと話す方法は、眠っている時に話すこと」とアドバイスをする。
それに対してマルコムも、「母親と素直に話すべきだ」とアドバイスを送る。
学校からの帰り道、事故での渋滞に引っかかった車の中で、コールは母親に「秘密を話す」と持ちかけ、死者が見えることを打ち明ける。
リンは、「疑っていない」と口にするが、内心はそのことを信じることができない。
すると、コールは「お祖母ちゃんがペンダントを持ち出して悪かったと謝っている、よく自分の元へ来る」と口にする。
疑うリンだが、コールが知らないはずのリンと祖母の思い出話を口にしたことで、リンは涙を浮かべる。
リンは母親の墓参りに行くと、いつもある質問を投げかけていた。
質問の内容はわからなかったが、祖母はそれに対して「毎日」と答えていたことを、コールはリンに伝える。
コールがどんな質問をしていたのか尋ねると、リンは「自分を愛していたか」と答えた。
二人は泣き崩れて抱き合う。
コールがリンに素直に話をしたことで、二人の関係はようやく回復の兆しを見せる。
一方、マルコムもコールのアドバイスどおりに、アンナが眠っている時に声をかける。
眠っているアンナは、「マルコムどうして?」、「なぜわたしを置き去りに…?」と呟いた。
そのとき、マルコムの元に結婚指輪が転がる。
アンナの手には結婚指輪がはめられており、マルコムは自身が指輪をしていないことに気づく。
「死んだと思っていない」。
コールの言葉を思い出し、狼狽するマルコム。
そう、マルコムはヴィンセントに発砲されたあの日、すでに命を落としていたのだ。
すべてを察したマルコムは、「愛してるよ」とアンナにささやきかける。
アンナは眠った状態で、「おやすみマルコム」と呟いた。
アンナの言葉を聞いたマルコムは、安らかにあの世へと旅立っていった。
登場人物
マルコム(ブルース・ウィリス)
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優秀な小児精神科医である一方で、仕事に時間を割き、妻であるアンナとの時間を確保できていないことを気にしている。
10年前に担当していたヴィンセントという青年に、「自分を救ってくれなかった」と責め立てられ、発砲される。
青年を救えなかった後悔から、よく似た少年コールを救うことを決意。
コール(ハーレイ・ジョエル・オスメント)
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死者が見える9歳の少年。
両親は離婚しており、母親であるリンとともに暮らしている。
死者が見えることから、不可解な行動や言動を採り、家庭でも学校でも浮いた存在として扱われる。
アンナ(オリヴィア・ウィリアムズ)
マルコムの妻。
夫を愛しているが、仕事に熱中するあまり、自分がないがしろにされていると感じている。
リン(トニ・コレット)
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コールの母親。
夫と別れ、コールをひとり育てるが、コールの不可解な行動や言動、周囲で起こる不審な出来事に頭を悩まされている。
ヴィンセント(ドニー・ウォルバーグ)
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マルコムの元患者。
少年時代にマルコムのケアを受けていたが、結局治ることはなく、その後も苦しみ続けた。
そのことへの恨みから、マルコムの自宅に侵入。
マルコムに発砲した後に、自身の頭を撃ち抜き自死する。
解説・考察
タイトル『シックス・センス』の意味
タイトル『シックス・センス』は日本語で『第六感』。
人間は知っての通り、「視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚」の第五感を備えているが、これに加えて、「霊感や予知能力」なんかのことを『第六感』と呼ぶ。
コールが持つ霊が見えるという第六感になぞらえて、このタイトルが用いられている。
衝撃のラスト
本作は、あくまで「後悔を抱えた精神科医と特殊能力を持った少年がそれを克服していく物語」であるかのようにストーリーが進行していく。
しかし、最後に衝撃の事実が発覚する。
主人公のマルコムは、青年に発砲されたあの日、すでに命を落としていたのだ。
事件後、妻アンナはマルコムからの問いかけには一度も応じず、修復不可能なほどに彼らの関係がねじれているかのように演出されるが、実際はそうではない。
アンナには、死者であるマルコムの姿は映っていないのだ。
実際に確認をすると、作中でマルコムがコール以外の人物と会話を交わす描写はないことが分かるだろう。
扉が開かなかった理由
事件後から、マルコムは幾度も自室の扉を開けようと戸をひねるが、なぜか開かない。
その理由はラストシーンで判明する。
扉の前には、開かないように初めから障害物が置かれていたのだ。
「死者は自分が見たい物だけが見える」。
コールの言葉を思い出す。
マルコムの部屋の扉の前に障害物が置かれていたのは、おそらくアンナがマルコムのことを思い出さないために採った行動だと考えられる。
そんな自室を閉ざしている障害物は、マルコムにとって見たい物ではない。
だから、マルコムは最後に自分が死んだと気づくまで、扉の前の障害物には気づかなかったのだ。
マルコムが成仏できた理由
そもそも、マルコムはなぜヴィンセントに発砲された際に、成仏することができなかったのだろうか?
それは、二つの大きな後悔が残っていたためである。
一つは、「過去の自分の患者であるヴィンセントを救うことができなかった後悔」。
ヴィンセントは完治することはなく、結果的にマルコムに発砲して自殺をするほど、その後も苦しみ続けていた。
「青年が自分に殺意を持ったのも、すべて自己責任」。
マルコムは、青年を自殺に追い込んでしまったという意識から、ひどく禍根が残っていた。
そして、もう一つは「妻であるアンナとの時間を十分に作れなかった後悔」。
アンナが「仕事が優先で、私まで二の次」と発言したように、仕事に熱心なマルコムは夫婦の時間を十分に確保できていなかった。
マルコムはそのことを生前から自覚し、気にしていた。
これら二つの大きな後悔を残したまま、突然命を絶たれたことで、マルコムは死にきれなかったのだ。
最終的に前者の後悔は、ヴィンセントと似たコールを救ったことによって解消される。
死者ではあったものの、マルコムがいたからこそコールは問題を解消することができた。
後者の後悔は、最後にアンナに対してしっかりと別れを言えたこと、そして、アンナからも「おやすみマルコム」と別れを告げられたことによって、解消される。
こうして、抱えていた後悔をそれぞれ解消することができたマルコムは、安らかに天国へと旅立つことができたのだ。
※本稿では、文化庁により定められた引用のルールに基づき、画像・台詞の引用を行わせていただいております。
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